事業承継には、事業会社の株式を保有する別会社(持株会社)を設立し、その株式を後継者に引き継ぐ方法があります。
この記事では、持株会社を活用して事業承継を行うメリット・デメリットについて解説します。
持株会社を活用した事業承継とは
持株会社とは、自ら事業を行わず、他の会社を支配・管理することを目的に株式を保有する会社のことをいいます。
持株会社を活用した事業承継では、まずは後継者が持株会社として運営する会社を設立する必要があります。
設立後、現経営者が持つ事業会社の株式を持株会社に売却することで、事業会社の親会社となります。
持株会社を活用する事業承継のメリット
持株会社を活用して事業承継を行うメリットについてみていきます。
先代の経営者が現金を獲得できる
中小企業の多くは、先代経営者が自社株式を保有しています。
持株会社が株主になる過程で、先代経営者は保有する株式を売却し、現金を手にすることになります。
非上場企業の株式は現金化しにくいものですが、持株会社に売却することで売却益として現金化することが可能です。
株式の分散を防ぎ移転が円滑にできる
持株会社を活用すると、事業会社の株式がすべて後継者に集中します。
株の分散を防げるので、経営権を確保し安定した事業承継が可能です。
また、先代経営者から後継者へ事業承継を行うには、時間をかけて株式を相続または贈与するのが一般的です。
持株会社を用いる方法では、持株会社が先代経営者から株式を買い取った時点で事業承継が完了するため、株式の移転を円滑に行うことが可能です。
持株会社を活用する事業承継のデメリット
持株会社を活用して事業承継するデメリットについてみていきます。
持株会社に借入金が発生する
持株会社が先代経営者から株式を買い取る際、多額の資金が必要です。
後継者に十分な資産がない場合には、金融機関から資金調達する必要があり、借入金が発生する点はデメリットだといえます。
みなし贈与と疑われる可能性がある
みなし贈与とは、形式上は贈与に見えなくても実質的に贈与によって財産の移転があったと税務庁局が判断した場合、贈与税が課されるというものです。
たとえば、親が時価1億円の株式を子に5,000万円で売却した場合、差額の5,000万円は贈与とみなされます。
みなし贈与だと判断されると、後継者が贈与税を支払わなければならないので、注意が必要です。
まとめ
持株会社を活用した事業承継は、税負担の軽減や経営権の安定といったメリットがある一方で、借入金の発生や税務リスクなどのデメリットもあります。
また、資産の内容によっては、持株会社を活用するよりも、相続や贈与による承継の方が税率が低くなる可能性もあります。
最適な承継方法は、会社の状況や後継者の意向、税務上のリスクなどを総合的に判断した上で決定しなければなりません。
事業承継の最適な手法については、税務や事業承継に詳しい税理士への相談をおすすめします。